逃げ恥人気を紐解く「4つの数字」

    従来の視聴率だけでは計れない「逃げ恥」人気を4つの数字で紐解く

    新垣結衣の主演ドラマ「逃げるが恥だが役に立つ」(TBS)が12月20日の放送で最終回を迎える。

    同性が見ても親近感がある新垣、星野源というキャストに「ムズキュン」と呼ばれるじれったいムズムズする展開で進むラブストーリー。「情熱大陸」「新婚さんいらっしゃい!」など随所にパロディを込める遊び心と、ドラマとしての評価は高い。

    今記事では逃げ恥人気を表す4つのデータで紐解いてみる。

    (視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)

    TBS火曜22時ドラマ初の2ケタ視聴率スタート

    逃げ恥は2014年4月に設けられた「火曜22時ドラマ枠」で放送されている。

    2016年4月期の「重版出来!」など評価が高い作品はあったものの、同枠は視聴率的には苦しんでいた。

    しかし、逃げ恥は初回(10月11日)の視聴率で10.2%と同枠初の2ケタ発進。

    第2話では12.1%を記録し、15年4月期の「マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜」の最終回の10.5%を超え、早くも火曜ドラマ枠の歴代1位の視聴率を記録した。

    新垣、星野というキャストの人気もあるが、2ケタの初回視聴率の要因と考えられるのが、フジテレビのドラマ枠(制作は関西テレビ)の"引っ越し"だ。

    もともとはTBSと同じ火曜22時にドラマを放送していたが、2016年10月から火曜21時に移動した。

    これまでSMAP草彅剛の主演ドラマなどを放送してきたライバルが同時間帯からいなくなったことで、ドラマファンの視聴が逃げ恥に集まり、好スタートを切る要因となった。

    「半沢」以来!右肩上がりに伸びた視聴率

    連続ドラマは注目度の高い初回の視聴率に比べると、第2話の視聴率が減少するケースがほとんどだ。

    現在、視聴率20%を連発するテレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX ~外科医・大門未知子~」も初回視聴率は20.4%だが、第2話は19.7%と微減している。

    一方、逃げ恥は初回放送から第2話では10.2%→12.1%と大幅アップしている。

    第1話放送後からドラマでの新垣結衣のキュートさ、さらにエンディングの「恋ダンス」がネットで話題となったことで注目度が増したことが一因だ。

    さらに逃げ恥は第10話まで視聴率が一度も下がらず、常に右肩上がり。評判を聞きつけて見始めた視聴者を、確実にファンにしてきた結果といえる。

    逃げ恥のように、右肩上がりの視聴率を記録した連続ドラマは2016年にはない。さかのぼってみると、2013年7月にTBSに放送された「半沢直樹」以来の現象だ。

    口コミで広がり、作品の質によりファンを増やし、社会現象となる。逃げ恥はドラマにとって理想的な姿といえる。

    右肩上がりのままで終われるかも注目だ。

    録画視聴はリアルタイムよりも常に上

    視聴率調査会社「ビデオリサーチ」では10月3日から、これまでの視聴率(リアルタイム視聴率)に加えて、録画再生で見られた「タイムシフト視聴率」の公表をスタートさせた。

    10月(10月3〜30日)までのタイムシフト視聴率のデータでは驚きの結果が出た。

    リアルタイム視聴率では5位以内に入らない「逃げ恥」が、タイムシフト視聴率では2位に2.9ポイント差をつけ、1位に輝いたからだ。

    「逃げるが恥だが役に立つ」の視聴率のグラフを見ると、タイムシフト視聴率が常にリアルタイム視聴率を上回っていることが分かる。

    このグラフは逃げ恥の特徴といえる。

    例えば同じTBSの「IQ246〜華麗なる事件簿」ではリアルタイム視聴率がタイムシフト視聴率を常に上回っている。同局のほかのドラマでもリアルタイムの方がタイムシフトよりも高い。

    逃げ恥のタイムシフト視聴率が多い理由には、放送される22時までに帰り、テレビの前にはいられない社会人が見ていると考えられる。

    また「幼稚園の中でも『逃げ恥』は話題。普段はドラマを見ないような人も『録画して3回くらい見ている』とすっかりはまってます」とは、小さい子供を抱える逃げ恥ファンの女性。

    小さな子供がいるため、普段はドラマから離れている層が、録画して見ていることもタイムシフト視聴率が伸びている理由の一つといえる。

    逃げ恥は総合視聴率で「ドクターX」を超えるか

    タイムシフト視聴率とともに、ビデオリサーチが11月から新たに公開したのが、リアルタイム視聴率にタイムシフト視聴率を加え、重複視聴をのぞいた「総合視聴率」だ。

    これまでの視聴率は、録画視聴は含まれておらず、ドラマやアニメなど録画が多い番組では実態と離れているとの声は以前からあった。実際、ドラマはバラエティー番組よりもタイムシフト視聴率が高いとのデータも出ている。

    テレビ離れが叫ばれる近年、リアルタイム視聴率では、放送時にテレビの前にいる年配に強いドラマが高視聴率を記録することが多かった。

    だが総合視聴率から見ると、本当に人気を集めたドラマが分かる。

    10月期のドラマでリアルタイム視聴率1位を独走しているのは「ドクターX」だ。11月24日放送話で、総合視聴率でも30.1%を記録しており、この数字が現時点での10月期の連続ドラマ最高記録となっている。

    逃げ恥も12月6日放送の第9話で総合視聴率30.0%を記録。「ドクターX」に肉薄している。

    両作ともに今週で最終回を迎える。

    逃げ恥が、リアルタイム視聴率の高い「ドクターX」を総合視聴率で超えられるか。今後のテレビの評価基準を考える上でも、注目を集めそうだ。