今フェイスブックに何が起きているのか。個人情報の不正利用の問題の経緯を辿る。

    事の始まりは2010年。


    先週末からフェイスブックはかつてない危機に瀕している。トランプ陣営に雇われたデータ分析ファームであるケンブリッジ・アナリティカが、ユーザーの承諾なしに数千万人の個人情報を不正利用していたと、報じられたのだ。

    フェイスブックには、2010年から2015年にかけて、サードパーティのアプリに、個人情報の詳細を集めることを許していた。悪用されることに気がついたフェイスブックは2015年、(外部の)アクセスを一時停止し、プラットフォームをアップデートした。しかし、ケンブリッジ・アナリティカは既に何千万人ものデータを集めており、手遅れだった。


    2010年:フェイスブックはデベロッパーがアクセスできるGraph API(バージョン1.0)を起動した。これにより、広範囲のユーザーデータの集計が可能となった。

    Graph APIとは、フェイスブックのプラットフォームにデータを入れたり、取り出したりできる基本的な手順。(API:アプリケーションプログラミングインターフェイス)

    2010年4月、フェイスブックはソーシャルグラフ(ネット上での人間の相関図)をサードパーティのアプリに公開した。ユーザーの「友達」の情報を含んだ莫大な量のデータを、取得理由を伝えることなく、要請できるようになった。

    これらのアプリはユーザーの公開プロフィール(名前、性別、場所、タイムゾーン、フェイスブックID)が含まれた広範囲のデータセットを取得できた。それだけではなく、そのユーザーの友達の名前、経歴、誕生日、学歴、政治的見解、交際状況、宗教、メモ、オンライン表示などの情報もである。さらに許可が与えられると、デベロッパーにはユーザーの個人メッセージへもアクセスが拡大できた。(どれほどの許可で、どこまでアクセス可能かは、このレポートの5枚目に記載してある)

    同年、ワシントン・ポスト紙のオプ・エド(新聞社外の著名人が意見や見解を記すコーナー)で、マーク・ザッカーバーグ氏はサイトのプライバシーポリシーを作り仕直すことを誓った。データ許可のより細かなコントロールを提供することで、一般がアクセスできるユーザー情報の量を減らすためだ。

    2012年:フェイスブックは許可申請ページのデザインに微調整を加えた。多くの個人情報を与えていることがわかりにくくなった。

    下の2012年に撮られたスクリーンショットを見ると、それまでゲームのページを許可する際に現れていた「許可(Allow)」「許可しない(Don't Allow)」から、「ゲームをする(Play Game)」に変わっている。この変更により、データの利用を許可しているかどうかが、ユーザーにわかりにくくなってしまった。さらに、この新しいデザインでは、「基本情報(basic informationa)」が何なのかの説明が(?)で隠され、ユーザーは読むために別のページに進まなければいけなくなった。

    2013年:ケンブリッジ大学の調査員、アレクサンダー・コーガン氏はGraph APIを用いたクイズを作成。27万人以上のユーザーをこれに回答したことで、回答者のデータとその友達のデータが彼の手にわたった。

    「グローバル・サイエンス・リサーチ」というファームの調査員と名乗る、アレクサンダー・コーガン氏は、アマゾンメカニカルターク(アマゾンウェブサービスの一つ)で、コーガン氏が作成した性格クイズの回答者人を雇った。このアマゾンのサイトでは、お金を払い簡潔な仕事を人に提供することができる。ザ・インターセプトによると、コーガン氏は1ドルか2ドルを支払い、回答者個人のフェイスブックのアカウントで性格クイズを受けるようにしたという。

    27万人以上の回答がコーガン氏に渡り、回答者の友達、つまり何千万人にわたる人のフェイスブック上のデータにコーガン氏がアクセスできるようになった。コーガン氏は、フェイスブックとユーザーに、データは匿名化されると伝えていたが、匿名化されていなかった。

    ケンブリッジアナリティカの集計データと、「データ漏洩した」の人々のデータを活用することを、多くの話題にしている。今となっては削除されたツイートだが、フェイスブックの幹部であるアレックス・スタモス氏は、コーガン氏は何のシステムも壊していないと主張していた。「彼は集めた後にデータの悪用をした。だが、だからといって遡及的に『漏洩』だというわけではない」

    2014年:フェイスブックはユーザーの感情に対する影響について行ったニュースフィードの実験を発表。ユーザーからは怒りの声があがった。

    フェイスブック上のプライバシー懸念に対して怒りは広がっていくのだが、この最初の過程を刺激したのが、2014年6月に公開された調査だった。フェイスブックがしっかりとした承諾を取らずにリサーチをしたことに、ユーザーは激怒した

    ニュースフィードの表示が人の気分にどう影響しているかを調べる調査を、フェイスブックは2012年に実施。約70万人のユーザーが対象とされた。対象のユーザーが同意したアカウント作成時のデータ利用に関するポリシーにこの調査は遵守しており、それがこの調査への承諾となった、とフェイスブック側は述べている。しかし、フォーブスの報道によると、ウェブサイトの条項の「リサーチポリシー」の節は、2012年5月、この調査の4ヶ月後に追加されたものだったという。

    2014年:フェイスブックはGraph API(バージョン1.0)をとがめ始めた。

    2014年に行われた通年開催のフェイスブックのF8会議において、Graph APIの利用を縮小させようとしていることが、明らかになった。これは、サードパーティのアプリケーションがアクセスできるフェイスブックのデータの量が著しく規制させることを意味している。さらに、アプリは慎重なデータにリクエストする前に、フェイスブック側から承認を受けなければいけなくなるというのだ。

    このイベントのプレスリリースには、「アプリと情報を共有するのが心配で自身のデータをもっと管理したいという声が聞こえました」と記載されている。

    しかし、2010年から2015年の間、許可されたフェイスブック上のアプリは、過去に遡って規制されていなかった。それだけでなく、フェイスブックのユーザーのサーバーから集められたデータをサードパーティが保存したようだ。

    2015年:フェイスブックはGraph API(バージョン1.0)を停止した。

    2015年4月30日、外部へ提供するデータを減らすために、フェイスブックは(外部からの)Graph APIへのアクセスを停止して、プラットフォーム自体をアップデートした。フェイスブックは、ユーザーがデベロッパーと共有している情報に対し、より細かい管理を提供し、「あなたが提供している情報を編集する(Edit the info you provide)」のリンクを新しいログインのページに追加した。

    2015年:テッド・クルーズ氏の選挙キャンペーンに、何百万人ものフェイスブックユーザーの「心理学的なデータ」が利用されていたとガーディアン紙が報道。フェイスブックはケンブリッジ・アナリティカにユーザーデータを削除するよう、法的措置をとった。

    コーガン氏が「調査目的で」取得したフェイスブックユーザーのデータを、ストラテジック・コミュニケーション・ラボラトリーズと言うファームに売ったことを、フェイスブックはガーディアン紙の調査で知った。そのファームが、現在のケンブリッジ・アナリティカだ。

    このファームがユーザーのデータを取得したことは事実だ。フェイスブックはその事実を確認したにも関わらず、公には認めなかった。フェイスブックの広報担当者が発表した声明文によると、フェイスブックは法的措置を用いてケンブリッジ・アナリティカに「不適切に集められた全てのデータ」を使えないようにするように圧力をかけたという。

    フェイスブックの幹部であるアンドリュー・ボスワース氏は、このファームは「法定文書でデータを削除したと証明した」といい、それがこのファームがフェイスブックというプラットフォームから完璧に排除されていない理由だという。

    2016年:大統領候補だったドナルド・トランプ氏陣営がケンブリッジ・アナリティカを雇う。

    大統領選挙戦前に、ドナルド・トランプ氏陣営はフェイスブック広告を使ったキャンペーンに投資していた。ある力を持ったトランプ氏支持の政治行動委員会は、反ヒラリー・クリントン氏のビデオの指揮を取り、これはケンブリッジ・アナリティカによって判別された特定のオーディエンス層に向けて製作された。ケンブリッジ・アナリティカの業務取締役であるマーク・ターンベル氏がこのファームはフェイスブック上の「いかさまヒラリーを敗る」ビデオキャンペーンに責任を持っていたと述べたことが、Channel4Britainによる調査で明らかになった。

    2018年3月17日:ケンブリッジ・アナリティカが約5千万人のフェイスブックユーザーから不適切に集められたデータを未だに所有していると、ニューヨーク・タイムズ紙ガーディアン紙が報じた。

    ケンブリッジ・アナリティカはフェイスブックのユーザーデータ全てを削除したわけではなかった。レポートの公開後、フェイスブックはケンブリッジ・アナリティカや、その契約業者、ユーノイア・テクノロジーズのクリストファー・ワイリー氏のアクセスを一時的に停止した。ワイリー氏はケンブリッジ・アナリティカによるフェイスブックのデータ活用の詳細を、ニューヨーク・タイムズ紙とガーディアン紙に暴露した人物だ。

    2018年3月20:連邦委員会はフェイスブックとケンブリッジ・アナリティカに対する調査を開始

    連邦取引委員会は、2011年にフェイスブックが政府と結んだユーザーのプライバシー保護に関する合意に違反したか調査している。アメリカの議員は、議会の前に証言するようにCEOのマーク・ザッカーバーグ氏に求めている。

    2018年3月21日:ザッカーバーグ氏は沈黙を破り、アプリによるユーザーデータアクセス許可を取り消す簡単な方法を発表した。


    「私たちにはあなたのデータを保護する責任があります。もし、それができないのなら、あなたにサービスを提供する立場にありません。いったい何が起きたのかへの理解と、再発防止に努めてきました」と自身のフェイスブックで投稿している。

    3ヶ月以上起動していないユーザーのデータに、アプリのデベロッパーがアクセスできないようする、とザッカーバーグ氏は発表。これにより、アプリのデベロッパーに提供しなければいけない情報は減る。第三者と共有するデータ量を劇的に減らした2014年より、さらに前のデータにアクセスできる全てのアプリを監査するという。

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:村上愛衣

    BuzzFeed JapanNews